不在者財産管理人の弁護士費用(申立報酬と管理人報酬)の相場
不在者財産管理人選任申立を行う際に、弁護士費用がどのくらいかかるのか、という点が気になることでしょう。
以下では、不在者財産管理人に関する弁護士費用について、弁護士がわかりやすく丁寧に説明します。
是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。
不在者財産管理人の弁護士費用には2種類ある
不在者財産管理人の弁護士費用には、次の2種類があります。
- 不在者財産管理人選任申立の代理報酬
- 不在者財産管理人の弁護士報酬
以下、それぞれについて説明します。
不在者財産管理人選任申立の代理報酬
不在者財産管理人が必要な場合、不在者の従来の住所地又は居所地の家庭裁判所に対して、不在者財産管理人選任申立を行います。
この申立手続は、次の3つのいずれかの方法を行うことができます。
- 申立人本人が自ら行う
- 弁護士が申立人を代理して手続きを行う
- 司法書士に申立書の作成や添付書類の収集を依頼した上で、申立人本人が申立手続を行う
弁護士や司法書士に依頼した場合は、別途費用がかかりますが、手間なく確実に手続きを進めることができるというメリットがあります。
弁護士と司法書士の違いは、弁護士は申立人を代理して手続きをできるのに対し、司法書士は書類の作成・収集を代行できますが、手続きを代理することはできません。簡単に言うと、弁護士の方が丸投げできるため手間がかからないということです。
報酬については、弁護士の方が司法書士よりも本人の代わりにできるが多いため、その分、多少高くなる傾向があります。
相場としては、弁護士が20万円以上、司法書士が10万円~20万円前後のところが多いようです。
弁護士報酬については、2008年11月に日本弁護士連合会が全国の弁護士に実施したアンケートの結果が参考になると思われるので、紹介します。
このアンケートは、不在者財産管理人ではなく、成年後見人選任申立の報酬についてのものですので、必ずしも不在者財産管理人選任申立ての報酬が同じ金額になるわけではありませんが、一つの参考にはなるかと思います。
このアンケートによると、成年後見人選任申立の弁護士報酬の分布は下の図表のようになっています。
報酬額 | 回答数 | 割合 |
---|---|---|
10万円前後 | 241 | 30.7% |
20万円前後 | 330 | 42.0% |
25万円前後 | 61 | 7.8% |
30万円前後 | 117 | 14.9% |
50万円前後 | 12 | 1.5% |
その他 | 24 | 3.1% |
合計 | 785 | 100.0% |
20万円前後を中心として、10万円前後から30万円前後まででほとんどあることが分かります。
不在者財産管理人の弁護士報酬
不在者財産管理人が報酬を求める場合は、家庭裁判所の判断により、不在者の財産から支払われることになります。
管理人が不在者の親戚や友人の場合は、報酬を請求しないことが多いです。
弁護士や司法書士等の専門家が管理人になった場合は、通常、報酬付与申立が行われます。
報酬額は、管理の煩雑さ等の事情を考慮して、家庭裁判所が決定します。
目安としては月額1万円~5万円くらいです。
しかし、不在者の財産が少ない場合は、家庭裁判所は申立人に予納金に納付を命じ、不在者財産管理人への報酬は、その予納金から支払われます。
予納金の金額は、管理の手間や難易度等に応じて、数十万円から100万円くらいの金額を裁判所が決めます。
予納金が支払えない場合は、50万円を限度に、日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助を受けられる可能性があります。
法テラスの民事法律扶助は、誰でも利用できるわけではなく、収入や資産が少ない方だけが利用できます。
利用基準については、法テラスのウェブサイトのこちらのページでご確認ください。
不在者財産管理人候補者について
家庭裁判所は、不在者財産管理人を選任する場合、不在者の親族や、弁護士又は司法書士等の専門家から選任することになりますが、申立人が、家庭裁判所に対して、事前に、不在者財産管理人の候補者を推薦することを認めている場合もあります。
不在者財産管理人の選任は裁判所が行うため、必ずしも候補者がそのまま選任されるわけではありませんが、推薦を行う場合には、申立人がコミュニケーションの取りやすく信頼のおける人を候補者に据えることをお勧めします。