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遺産確認の訴え(遺産確認訴訟)等による遺産の範囲の確定方法

ある財産を遺産に含むべきかについて相続人間で争いがある場合は、遺産確認の訴え(遺産確認訴訟)等の方法によって、遺産の範囲を確定することができます。

この記事では、遺産確認の訴え等の方法によって遺産の範囲を確定する方法について、弁護士がわかりやすく説明します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

遺産確認の訴えとは?

遺産確認の訴えとは、相続人の間で遺産の範囲をめぐって争いがある場合、つまり、ある特定の財産が被相続人(亡くなった人)の遺産として遺産分割の対象となるか、それとも相続人の一人の固有の財産かが争われている場合などに、自己の固有の財産であると主張している人に対して、他の相続人が当該財産が遺産に属することの確認を求める訴えのことです。

遺産確認の訴えは、遺産確認訴訟とよばれることもあります。

遺産確認の訴えは、誰が提起できる?

遺産確認の訴えを提起できる人は、ある財産が遺産に属することを確認したい人です。

一人で提起しても構いませんし、当該財産が遺産に属することを確認したい相続人と共同で提起しても構いません。

なお、訴えを提起した人のことを「原告」といいます。

遺産確認の訴えは、誰に対して提起する?

遺産確認の訴えは、原告になっていない相続人全員に対して提起します。

問題となっている財産が自己の固有の財産であると主張している人だけでなく、遺産に属すると主張している人も、特に何の主張もしていない人もひっくるめて全員に対して提起しなければなりません。

なお、訴えを提起された人のこと「被告」といいます。

相続人の中に原告にも被告にもなっていない人がいると、原則として訴えが却下されてしまいます。

遺産の範囲が問題となる主な事例

次のような場合に、遺産の範囲が問題となることが多いです。

  • ある相続人名義の預貯金について、他の相続人が被相続人の名義預貯金であると主張している場合
  • 被相続人名義の預貯金について、自己の名義預貯金であると主張している人がいる場合
  • 被相続人名義の財産や被相続人が亡くなる直前まで占有していた財産について、相続人の一人が生前贈与を受けたことを主張している場合

以下、それぞれのケースについて説明します。

ある相続人名義の預金について、他の相続人が被相続人の名義預金であると主張している

名義預金とは、口座名義人と真の預金者が異なる預金のことです。

例えば、口座名義人は子である相続人でも、実際には親である被相続人が口座を管理していて真の預金者である場合、その預金は被相続人の名義預金となります。

被相続人の名義預金は、遺産に属し、遺産分割の対象となりますが、口座名義人がこれを認めない場合は、名義預金であると主張する相続人は、遺産確認の訴えを提起し、当該預金が遺産に属することの確認を請求することができます。

被相続人名義の預金について、自己の名義預金であると主張している人がいる

良くないことですが、税金や強制執行を免れるためなどに、親族に名義を借りて、親族名義の口座に預金をしているケースが稀にあります。

このようなケースで口座名義人が亡くなった場合に、自分が真の預金者であると主張し、当該預金を遺産分割の対象としないことを求めてくることがあります。

他の相続人は、このような主張を受け入れられない場合、遺産確認の訴えを提起し当該預金が遺産に属することの確認を請求することができます。

被相続人名義の財産や被相続人が亡くなる直前まで占有していた財産について、相続人の一人が生前贈与を受けたことを主張している

相続人の一人が、被相続人から生前贈与を受けた財産について、名義変更をしていなかったり、まだ引渡しを受けていなかったという場合に、その相続人は、当該財産は贈与済みであり遺産に属さないということを主張するでしょう。

他の相続人は、このような主張を受け入れられない場合、遺産確認の訴えを提起し当該財産が遺産に属することの確認を請求することができます。

遺産確認の訴えの管轄裁判所は?

遺産確認の訴えの管轄裁判所(提訴すべき裁判所)は、被告の住所地を管轄する地方裁判所です。家庭裁判所ではないので、ご注意ください。

被告が複数いる場合は、その中のどの人の住所地を管轄する地方裁判所でも構いません。

また、原告と被告とで合意した地方裁判所に提訴しても構いません。

遺産確認の訴えにおける判決確定の流れ

遺産確認の訴えにおいて、原告の請求が認容される(原告が勝訴する)と、「別紙目録記載の財産△△は、被相続人亡○○の遺産に属することを確認する」という判決が下されます。

反対に、請求が棄却される(原告が敗訴する)と、その財産が遺産に属さないことが確認されたことになります。

判決に不服がある場合は管轄の高等裁判所に控訴することができ、さらに、高等裁判所の判決に不服がある場合は最高裁判所に上告することができる場合があります(控訴・上告のことを「上訴」といいます)。

期限内に上訴しなかったり、最高裁判所の判決が下ると、判決が確定し、以降は、不服申立を行うことができません。

また、判決確定後は、別の裁判や審判においても、判決の内容に反する主張をすることはできなくなります。

判決確定後の流れ

遺産確認の訴えの判決が確定し遺産の範囲が確定すると、遺産分割協議に移ります。

遺産分割協議が成立しない場合は、家庭裁判所における遺産分割調停又は遺産分割審判によって、遺産分割方法を決定します。

なお、遺産確認の訴えの判決に反する主張をすることは認められません。

遺産確認の訴え以外で遺産の範囲を決める方法

遺産の範囲を決める方法は、遺産確認の訴え以外にもあります。

協議

多くのケースでは、遺産確認の訴えによらずに、相続人間の協議によって遺産の範囲が決められます。

遺産分割調停・遺産分割審判

また、相続人間で遺産の範囲について争いがあり、協議によって遺産の範囲を決めることができないかった場合においても、遺産確認の訴えによらずに、遺産分割調停において合意形成を図ったり、遺産分割審判において判断を示してもらうことができます。

ただし、遺産分割審判において遺産の範囲についての判断が示されても、その判断には既判力がないと解されています。

既判力とは、判決確定後に二度と争えなくなる効力のことです。

つまり、遺産分割審判において遺産の範囲についての判断が示されても、その判断と異なる主張をすることも許されるのです。

そうすると、遺産分割審判で決まったはずの遺産分割方法について、やり直さなければならなくなってしまうため、協議や調停で遺産の範囲を確定できなかった場合は、遺産確認の訴えによって、遺産の範囲を確定させた方が二度手間を防ぐことができます。

所有権確認の訴え

ところで、前述のとおり、遺産確認の訴えは、ある財産が遺産に属することの確認を求める訴えなので、遺産に属すると主張している人でなければ提起できません。

遺産に属さず自己の固有の財産であることを主張している人はさっさと裁判で決着させたい場合は、所有権確認の訴えを提起することができます。

遺産確認の訴えの結果は相続税の計算にも影響が及ぶ

相続税の税額は遺産額に基づいて計算されるため、遺産確認の訴えの結果は相続税の計算にも影響が及ぶことになります。

遺産の範囲については弁護士に相談すべき

遺産の範囲について、相続人間で争いがある場合は、できるだけ早く弁護士に相談することを強くお勧めします。

それぞれの主張の妥当性を検証したり、どのように論を展開すれば自分の主張が通りやすくなるか、遺産確認の訴えを提起すべきかどうか、どのような訴訟戦略をとるべきか、反対に遺産確認の訴えを提起された場合にどのように対処すべきか等、弁護士に相談することで、不安も解消されますし、有利に進めることができるでしょう。

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